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第9回:NPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹


女性が働きやすい社会が、地球を救う?!(1)

 

駒崎弘樹(NPO法人フローレンス代表理事)
武藤新二(汐留イノベーションスタジオ ディレクター

 

『ぷちドネ』以来のお付き合いである駒崎さん。彼は今、多くの働くママたちが待ち望んでいる「病児保育」を、迅速に整備すべき真のライフラインとして訴え、実践しています。そんな駒崎さんと、女性の社会進出、企業とNPOのコラボレーション、さらには子育てにおけるパパの役割といったテーマについて話し合いました。

 

 

『日本は課題先進国、だからこそ......。』

 

dialogue_with_sis_vol9_01.jpg武藤 働くママにまつわる問題で言うと、「待機児童」という言葉は浸透してきましたが、「病児保育」は、その深刻度の割に、まだ社会的認知度が低いという印象があります。

 

駒崎 そうですね。まず数字の話をすると、仕事と育児を両立している女性の72.2%が、病児保育のことで悩んでいるんです。その一方で、病児保育の機能を持つ保育園は、全国で2%しかありません。私たちは、まずこの事実が「問題である」ということを可視化する必要があると考えています。

 

武藤 フローレンスは現在、1400世帯の病児保育をサポートしているそうですが、これは、具体的にはどういう数字なのでしょうか。

 

駒崎 以前、とあるコンサルティング会社が、東京23区内でフローレンスが助けなければならない人の数を算出してくださったのですが、その数は、約6万世帯だったんです。彼らはそれを「市場規模」と仰っていましたが(笑)、つまりそれが、私たちがサポートさせていただきたい人たちの規模だと認識しています。そしていずれは日本全国、さらには世界でも病児保育を広めていきたいと考えています。

 

武藤 「世界に広める」という視点が、とても興味深い。裏返せば、世界の国々がそれを求めていると考えてもいいのでしょうか。

 

駒崎 アジアの国際会議に出てみて、韓国や台湾などが、日本の少子化傾向を後追いしていることを知ったんです。特に韓国が顕著なのですが、女性の社会進出やキャリアアップには「ガラスの天井」があって、活躍の場が限られている。たとえ活躍できたとしても、仕事か育児の選択を迫られてしまう。その辺は日本とそっくりで、病児保育が、いずれ問題になってくることは目に見えている。だったら、「こういうやり方がありますよ」ということを伝えてあげたい。そして、たとえば韓国で病児保育をやりたいという人が出てきたら、彼らを後押ししてあげたいと思っています。

 

武藤 病児保育という日本発のインフラを、世界に広げていくということですね。

 

dialogue_with_sis_vol9_02.jpg駒崎 日本というのは、課題先進国なんです。それはつまり、どの国よりも早く、課題を解決できるチャンスがあるということです。たとえば2050年には、人口の4割が高齢者になるわけです。これだけの超高齢化社会を迎えるのは、人類史上初めてです。そこに向けてどの国よりも早くひた走っている日本は、どの国よりも早く課題をクリアする必要がある。そして、課題解決の処方箋を各国に提供できるのであれば、それは、人類に貢献していることにつながりますよね。むしろそれはチャンスなのではないかと。

 

武藤 それだけの高齢化社会が進むとなると、いずれ、移民の問題が出てくる可能性がありますね。東アジアや東南アジアの方々が対象になりそうですが、いずれにせよその時点で、日本が世界からうらやましがられるような社会システムを持っているとすれば、きっと、来られる方にとってもメリットが生まれるのではないかと思います。

 

駒崎 移民を労働力としてだけ見ると、世界中で起きている問題と同じことが起きる可能性があります。多様な人を懐深く受け入れて活躍していただく、という土壌を作る必要があると思うのですが、やはりその第一歩は、女性だと思っています。女性を活用できないのに、移民を活用できるわけはないですからね。ジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)というものがありまして、女性の能力をいかに活用しているかを計る数値なのですが、調査をしている92か国中、日本は46位なんです。これは、たとえばホンジュラスよりも下です。ヨーロッパやほかのアジア諸国はもちろん、経済規模が日本に比べてとても小さい中南米の国と比べても、女性を活用できていない、という事実がはっきりしているわけです。その一方で、ヒューマン・ディベロップメント・インディケーター(HDI)といって、人間開発指数、つまりはどれだけ教育を投資したかを計る数値は、10位以内なんです。

 

武藤 つまり、投資しまくっているけれど、回収できていないということですね。なるほど、だとすると、たとえば病児保育の問題を解決するだけでも、そもそも投資している規模が大きいから、リターンも大きいということになりますよね。現時点では優秀な女性たちの力が活かされておらず、もし彼女たちの力をもっと活用できれば、イノベーションも生まれるでしょうし、労働力にもなる。いいことずくめなんですね。

 

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<プロフィール>
駒崎弘樹(NPO法人フローレンス代表理事)
1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後「地域の力によって病児保育問題を解決し、育児と仕事を両立するのが当然の社会をつくれまいか」と考え、フローレンスをスタート。日本初の「共済型・非施設型」の病児保育サービスとして展開。また10年から待機児童問題の解決のため、空き住戸を使った「おうち保育園」を展開。政府の待機児童対策政策に採用される。07年Newsweek「世界を変える100人の社会起業家」選出、同年「ハーバードビジネススクール クラブ オブ ジャパン アントレプレナーオブザイヤー2008」受賞。著書に『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』(英治出版)および『働き方革命』(ちくま新書)、『社会を変えるお金の使い方』(英治出版)がある。10年6月より厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員、10月よりNHK中央審議会委員に任命。10年9月、一児の父に。10年12月より内閣府「新しい公共」専門調査会推進委員に任命。

 

>> NPO法人フローレンスHP

 

武藤新二/MUTO SHINJI
株式会社電通 汐留イノベーションスタジオ チームリーダー/クリエーティブディレクター
1992年、広告会社電通に入社。クリエーティブディレクション、コミュニケーションプランニング・商品ブランド開発設計、ソーシャルデザイン、メディアコンテンツ企画制作など、仕事の領域は多岐に渡る。2010年7月、電通社内に「汐留イノベーションスタジオ」を立ち上げ、社内さまざまなセクションから集まったクリエーター、プランナーを率いる。


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