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第17回:財団法人日本宇宙フォーラム主任研究員 山中勉

地球人を育てるために(3)

『詩×宇宙×IT=地球人!』

wth_sis_17_3_01.jpg武藤 今回SISとの取り組みとして、宇宙をテーマにした詩集絵本『きらきら星に贈る詩』を、「こえほん」というアプリからリリースしました。詩人の谷川俊太郎さんが書き下ろしてくださった詩に続けるかたちで、福岡雙葉小学校の子どもたちが思い思いに綴った詩を絵本としてまとめたわけですが、いかがでしたか?

山中 実際に「絵本」として出版した場合、売れなければ在庫を抱えたり絶版になってしまいますが、アプリだとそういうリスクがないのがよかったですね(笑)。というのは冗談ですが、とにかく、いろいろな意味で今回の取り組みは大成功だったと思います。スマートフォンやタブレットPC専用のデジタル絵本にしていただいたのですが、「こえほん」を運営しているアイフリークさんには、とても感謝をしています。

武藤 アイフリークさんとは、ぷちドネというプロジェクトでご一緒して以来、IT技術を用いた様々な社会貢献やソーシャルビジネスの方法を、模索している関係なんです。「こえほん」は単なるアプリではなく、たくさんのユーザーを抱えるプラットフォームだと捉えると、様々な場面において機能できるのではないかと、その可能性と将来性に注目をしています。

山中 タブレットPCやスマートフォンは、これから、どんどん教育の中に入っていくと思いますし、そうなってくると、世界中とつながることができる。そういった意味で「地球人の心プロジェクト」も、一刻も早くIT化していかなければならないと思っていたところでしたので、非常にいいプラットフォームをご提案いただいたと思います。実際のところ、出前授業だけでは物理的な限界がありますからね。

武藤 授業のノウハウをオープン化していったり、子どもたちが作った詩を、アプリを使って先生が編集して絵本にまとめられたり。そういったアウトプットの仕組みを、日本宇宙フォーラム発で提供できたとすると、すごく話題になりそうですね。

wth_sis_17_3_03.jpg山中 絵本というかたちでパッケージ化されるとなると、「詩を書いてみたい、絵本を作ってみたい」と思う人たちが増えてくる可能性が出てきます。普通に学校で詩を作る授業をしたとしたら、当然ですが、詩をつくること自体が目的になってしまい、そこから広がりは生まれないですよね。また、谷川俊太郎さんも仰っていましたが、作った作品自体には、実はあまり意味がないんです。完成されたものではなく、プロセス自体に価値があるんです。価値観は人それぞれですしね。大事なのは、みんなで「宇宙って何だろう」とか「人って何でいるんだろう」といった素朴な疑問に対して、いろいろディスカッションをしていく場を、習慣として、社会の中に定着させたいと思っているんです。今回の「きらきら星に贈る詩」の作者は、福岡雙葉小学校の2年生(2010年当時)です。「地球は何回まわったのだろう?」という作品があるのですが、これは、科学者もその答えをいまだ持ち合わせていない問いです。小学校2年生と科学者が同じ問いを共有している仲間であるという事実は、すごい発見だと思います。そういう問いを、詩として認め、受け入れた先生もスゴイ。このようなことが、地球上のあちらこちらで起きていけば、地球人時代を迎えられるように感じています。それが、今回のプロジェクトに期待していることなんです。

武藤 いま、ひとりで生きていける時代ではないけれど、それにしたって、ひとりひとりは独立した存在だし、ユニークな存在であって欲しいですよね。そのためにも、詩を作るプロセスというか時間って、本当に大切だと思います。そしてその詩作の時間を、子どもたちがより興味を持って臨んでくれるためには、宇宙というテーマは最適な気がします。たとえば自己と他者の関係性といった、とても深くて難しいテーマを考えるとき、宇宙を題材にすることで、より本質的な部分を、するっとつかみ取ることができるんじゃないかと思います。その際に、IT技術というのは、手助けのひとつとしてとても有効だと思いますね。

wth_sis_17_3_02.jpg山中 今回の『きらきら星に贈る詩』のリリースに合わせて、『100億人の宇宙詩(そらうた)-地球人の心プロジェクト-』を立ち上げられたのも、いってみればITの恩恵だと思っています。作品募集中ですので、ぜひ、ご参加いただきたいですね。

武藤 応募作品はDVDに収録され、ロケットで国際宇宙ステーション「きぼう」へ打ち上げられる予定ですからね。こんな夢のあるプロジェクトに関わることができて、本当に感謝しています。

山中 いえいえ、100億人を地球人にすることができる日まで、引き続きよろしくお願いします。

武藤 こちらこそ、よろしくお願いします!


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<プロフィール>

山中勉/YAMANAKA TSUTOMU
1958生まれ。天秤座。アポロ11号の月着陸がきかっけで、日本のロケット創りの元祖である日産自動車宇宙航空事業部(現在のIHIエアロスペース社)に入社。その後、日本の宇宙機関であるJAXAの主幹研究員(宇宙連詩作り)を経て、現在は、財団法人日本宇宙フォーラムの主任研究員(地球人の心ぷろじぇくとの推進)。この10年間は、国際宇宙ステーションを利用したコトバ紡ぎの発案、企画、推進に従事。アフリカのウガンダ共和国や、国際宇宙大学を含む、国内外の小・中・高・大・社会人学校等に出向き、コトバ紡ぎを実践中。今までに、40を超える国や地域の人々、約2万人からコトバを集め、6枚のディスクに収録して国際宇宙ステーションに打ち上げ保管。2011年には、その努力が認められ、宇宙飛行士の毛利衛氏とともに歴程特別賞を受賞。著書として『宇宙連詩』(共著)、『地球人の交換日記(1)みあげれば がれきの上に こいのぼり』(編著)がある。

 

武藤新二/MUTO SHINJI
株式会社電通 汐留イノベーションスタジオ チームリーダー/クリエーティブディレクター
1992年、広告会社電通に入社。クリエーティブディレクション、コミュニケーションプランニング・商品ブランド開発設計、ソーシャルデザイン、メディアコンテンツ企画制作など、仕事の領域は多岐に渡る。2010年7月、電通社内に「汐留イノベーションスタジオ」を立ち上げ、社内さまざまなセクションから集まったクリエーター、プランナーを率いる。

 

photographs by Naoko Nozu


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