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第14回:NPO法人Teach For Japan代表理事 松田悠介

教育現場に、もっと社会性と時代性を(2)

 

『ClipCMに求められるネクストステップ。』

 

武藤 TFAの理念やシステムを、今後、条件や環境が異なる日本でどうローカライズしていくのか、その戦略をお教えいただけますか。

 

dialogue_with_sis_vol14_03.jpg松田 まず雇用に関してですが、企業の人事担当者の話を聞いていると、現在の新卒採用というシステムに対して、非常に問題意識を持っていることを肌で感じます。「卒業したばかりのひよっこでは、役に立たない」とさえ言いはじめています。例えば商社は、日本の雇用体系を守ってきた象徴的存在でしたが、今年遂に、第二新卒を採用しはじめました。「新卒3年枠」という言い方も、定着しつつあります。そして何より、「あと40年間、この企業で働くという気持ちでいられても困る」ともいっています。

 

武藤 まっさらな新卒を入れて実地教育していくより、アメリカのように即戦力が求められている時代になりつつあるわけですね。だとすると、大学を卒業してからの数年間をギャップイヤーと捉え、そこでどれだけ有意義な活動をしてきたか、ということが大切になってくる時代が訪れるかもしれませね。

 

松田 そうなんです。自分で問題意識を持って立ち上がり、課題解決することができる、真の意味でのグローバルな人材を継続的に生み出していけるようなインフラの整備は、今後確実に進んでいくと思います。Teach For Japan(TFJ)も、その流れに合わせていければと考えています。もうひとつの学生の質の問題ですが、「優秀で情熱のある人材をリクルーティングし、研修をして、教育現場へ送り出す」というのがTFJの活動の根幹ですので、努力を怠ってはいけない部分ですね。

 

武藤 その「努力」の一環として、より優秀な学生を集め、さらには質の高い授業を提供するべくはじめられたのが、「4者連係」なんですよね。具体的には、どういったプログラムなのでしょうか。

 

松田 大学、自治体、IT企業、NPOがつながって、お互いの強みを出し合ったプログラムを開始する、という取り組みです。まず大学は学生を出し、規定の時間の活動をすると単位認定となる仕組みをつくります。自治体は教材やプログラムを提供し、企業はPCやネットワークを提供します。我々は学生を選考したり研修したり、子どもたちを集めてきたりするわけです。SISとのお付き合いも、そういった流れの中ではじまりました。

 

武藤 ClipCMを活用した教育プログラムを共同開発していて、TFJの授業の中でも何回か実践しています。ClipCMの印象は、いかがですか?

 

松田 TFJが抱えている子どもたちは、みんな、コミュニケーションが苦手なんです。思っていることを話さないし、表現のバラエティも非常に限られている。「昨日なにしてたの?」「朝なに食べたの?」と聞いても「別に」しか帰ってこない。自尊心をもちづらく、自信をなくしている子も多い。そういう閉塞感のある子どもたちに対して、テクノロジーを使って知的好奇心をくすぐりながら、しっかり考えさせるClipCMは、コミュニケーションツールとしてすごくいいなと思います。

 

dialogue_with_sis_vol14_04.jpg武藤 いま社会に目を向ければ、表現方法って本当にたくさんある。ところが学校では、自己表現といえば、まだまだ作文が主体ですよね。写真やイラストを素材として、ぼくらが普段仕事にしているCMという表現方法でなにかを伝えることって、教育の現場でも活用できるんじゃなかってずっと思っていたんです。しかも、そこにITというこれから大切になるファクターをちゃんと埋め込んでおきたいと。

 

松田 ただ課題があるとすれば、ClipCMを使う動機付けですね。積極的に参加してくれる子どもたちがいる場合はいいけれど、いまや、iPadだからといって手を動かすわけではないし、どうやったらそういう子どもたちが興味を持って使ってくれるのか、そこに目配せをした「効くプログラム」の開発が、重要かと思います。

 

武藤 ぼくらが学校と取り組む場合、これまでは、例えば1/2成人式など「総合学習」の時間でClipCMを使っていただくことが多かった。それが逆に、可能性を限定してしまっていたのかもしれません。これからは、例えば国語や理科の授業でワークシート代わりに使うとか、放送委員がお昼の放送で使うとか、そういった普段の学校生活の流れの中に、自然に紛れ込んでいって、あとからClipCMならではの可能性に子どもたち自身が気づいてくれるような方法を、一緒に考えていきたいですね。

 

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<プロフィール>
松田悠介/Yusuke Matsuda(Teach For Japan 代表理事)
日本大学文理学部体育学科卒業後、体育科教諭として都内の中高一貫校に勤務。体育を英語で教えるSports Englishカリキュラムを立案。部活指導では都大会の予選ですら勝つ事ができなかった陸上部を全国大会に導く。その後、千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、2008年9月、ハーバード教育大学院修士課程(教育リーダーシップ専攻)へ進学し、修士号を取得。卒業後、PricewaterhouseCoopersにて人材戦略に従事し、2010年7月に退職。Teach For Japanの創設代表者として現在に至る。

 

>>Teach For Japan
>>Twitter:@matsudaedu

 

武藤新二/MUTO SHINJI
株式会社電通 汐留イノベーションスタジオ チームリーダー/クリエーティブディレクター
1992年、広告会社電通に入社。クリエーティブディレクション、コミュニケーションプランニング・商品ブランド開発設計、ソーシャルデザイン、メディアコンテンツ企画制作など、仕事の領域は多岐に渡る。2010年7月、電通社内に「汐留イノベーションスタジオ」を立ち上げ、社内さまざまなセクションから集まったクリエーター、プランナーを率いる。

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