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第13回:慶應義塾大学教授 清水浩


電気自動車が実現させる、よりよき未来(1)

 

清水浩(慶應義塾大学環境情報学部教授/株式会社SIM-Drive代表取締役社長)
武藤新二(汐留イノベーションスタジオ ディレクター)

2004年に最高時速370kmの電気自動車『Eliica』を開発し、ビジネスシーンでも一躍時の人となった清水浩教授。その清水教授とSISディレクターの武藤は、かつて一緒に本を作ったこともある間柄。SISの活動理念に少なからぬ影響を与えたという相手との、久方ぶりの対面の様子をレポートします。

 

 

『SIM-LEI、充電完了。』

 

武藤 ご無沙汰しております。現在は、大学教授と社長という2つのお立場を兼任なさっておられるから、以前にも増してお忙しいのではないでしょうか。

dialogue_with_sis_vol13_01.jpg清水 ちょうど、立ち上げた会社(SIM-Drive)で開発・製造した最初の電気自動車「SIM-LEI」(シム・レイ)が完成して、一息ついているところでした。

武藤 シム・レイは、SIM-Drive社が主催する「電気自動車開発プロジェクト」の第1号車なんですよね。確か、34社が集まったプロジェクトだったとか。具体的には、どんなかたちで進行したんですか?

清水 各社から2000万円の参加費を募り、1年かけて先行開発車を作る、という仕組みです。SIM-Driveは、将来大量生産を目指す電気自動車のプロトタイプを、参加企業・機関の方々と一緒に作り、学んだ技術やノウハウを自由に持ち帰っていただくというビジネスモデルで「電気自動車の普及を一刻も早く実現させる」べく、立ち上げました。初年度の今回は、1回の充電で300kmの走行を目指すということで開発を進めたのですが、結果的には24.9kwhのリチウムイオン電池を積んで、333kmを達成しました。十分、実用化のレベルにまで到達していると思います。

武藤 34社の中には、自動車メーカーをはじめ、モーター、部品、材料メーカーといった既存の自動車産業の担い手たちのほかに、新規参入を狙う企業や、商社、自治体もいたそうですね。電気自動車の普及は間違いなくやって来ると予測されますから、そうなると、このままでは確実に立ちゆかなくなる企業も出てくるでしょうし、逆にビジネスチャンスが訪れる企業も出てくるはず。今後の事業規模を考えると、2000万円という先行投資は決して高くはないのかもしれませんね。

清水 第一回目の参加企業は国内中心でしたが、2011年1月から始まった第二回目のプロジェクトでは、PSA・プジョーシトロエンやボッシュなど、海外のメーカーの数も増えています。特にPSAは、EU内での自動車製造数が第2位ですから、彼らが何かを摑んで帰ってくれると、電気自動車の普及がより早まるのではないかと期待しています。

武藤 海外と言えばTESLAのように、既に市場参入しているスポーツカータイプの電気自動車もありますね。例えばTESLAとシム・レイは、具体的にどこが違うのでしょうか。

dialogue_with_sis_vol13_02.jpg清水 現在世の中で販売されている電気自動車は、いかにガソリン車を改造するか、という視点から逃れられていないと思います。つまり、これまでエンジンがあった場所にモーターと電池を入れる、という発想です。私は、「原理が変わったら、かたちや構造全体が変わる」ことが、革新的技術が普及する時の必要条件だと思っています。シム・レイの大きな特徴は「インホイールモーター」、つまり、車輪にモーターが組み込まれているというメカニズムです。これによって、駆動効率が上がり航続距離を伸ばせるとともに、車内空間を従来よりも広くすることが可能になります。シム・レイもまだ、従来の「クルマ」の概念から完全に脱却しきれていませんが、小型車並の車幅にしては非常にゆったりとしていることが、乗っていただけると判ると思います。

武藤 運転席の前に19インチのモニターを配置できたのも、実はインホイールモーターの恩恵ですよね。これには正直驚きました! 情報や娯楽コンテンツなど、車内エンターテインメントのインターフェイス開発は、SISでもお手伝いができそうです。ぜひ、ご提案させてください。

 

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<プロフィール>
清水浩/Hiroshi Shimizu
慶應義塾大学環境情報学部 教授/株式会社SIM-Drive 代表取締役社長
1947年宮城県生まれ。東北大学工学部博士課程修了。国立公害研究所地域計画研究室長などを歴任する中で、30年間にわたり、電気自動車の開発に従事。2004年、ポルシェ並の加速力を持つ未来の電気自動車「Eliica」を誕生させる。著書に『脱「ひとり勝ち」文明論』(ミシマ社)『温暖化防止のために 一科学者からアル・ゴア氏への提言』(ランダムハウス講談社)など、共著に『爆笑問題のニッポンの教養 教授が造ったスーパーカー』(講談社)など。

 

>>慶應義塾大学 電気自動車研究室
>>SIM-Drive

 

武藤新二/MUTO SHINJI
株式会社電通 汐留イノベーションスタジオ チームリーダー/クリエーティブディレクター
1992年、広告会社電通に入社。クリエーティブディレクション、コミュニケーションプランニング・商品ブランド開発設計、ソーシャルデザイン、メディアコンテンツ企画制作など、仕事の領域は多岐に渡る。2010年7月、電通社内に「汐留イノベーションスタジオ」を立ち上げ、社内さまざまなセクションから集まったクリエーター、プランナーを率いる。

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