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第12回:サウンドアーティスト mamoru


日常が持つ多面性を、表現する(3)

 

『グローバリズムに染まった日常の先にあるもの』

 


dialogue_with_sis_vol12_05.jpg武藤 『日常のためのエチュード』シリーズの中でも象徴的なのが、「ストロープロジェクト」ですよね。初めてお会いしたときに、この作品をいただいて、SISのメンバーと一緒に音を出して盛りあがったのを思い出します。この「ストロー」、どうやって生まれたんですか。

mamoru 元々、ストローで出した音を加工して作品にしていたのですが、当時は特にストローであることを判りやすく提示しているわけではありませんでした。その後、例のアルメニアでの停電事件以来、会場に来た人に直接ストローを渡して音を出してもらう、というスタイルに切り替えました。ストローって倍音が鳴りやすいんです。倍音ってドとソ、つまり5度でハモるペンタトニックスケールみたいなところがあって、ちょっとオリエンタルな感じになるんですよ。

武藤 笙のような感じですかね。でもやってみると判るけれど、ストローで音を出すのって、結構難しいですよね。

mamoru そうなんです。だからみんな、必死になって吹き始める。その時の無防備な表情は、ぼくの作品にとってとても重要な要素です。来場者とのこの距離感の近さは、音楽をやっていた時も、サウンドインスタレーションをしていた時も感じられなかったものですね。

武藤 近々、初の作品集を出版されるそうですね。そういったインスタレーションなどで見られる参加者の表情なども、たくさん掲載した本になっていると聞きましたが。

dialogue_with_sis_vol12_06.jpgmamoru そうなんです。『etude for everyday life / 日常のための練習曲』というタイトルの本ですが、自分のポートフォリオをまとめたいと以前から思っていたところ、出版という機会を得ました。英語と日本語、すべて自分で原稿をまとめたので、世界中の方々に見ていただきたいですね。

武藤 mamoruさんの表現は、おそらく海外の方がアートとしてアプリシエイトしてくれる素地が強そうな感じがしますが、実際、世界各国で活動をしてみて反応はどうですか。

mamoru そうかもしれません。でもそれはなぜかと言うと、アメリカもヨーロッパも日本も、日用品って、ほとんど共通のコードだからなんです。例えばストローを見せて、使い方が判らないっていうことは、おそらくないですよね。そんなグローバリゼーションを背景として、それを批判するのではなく、乗っ取っちゃうというか、それをうまく使うことって、実はぼくの大きなテーマでもあるんです。人間、生きていれば必ず音を出しますから、それこそ、アクセスはとてもしやすい。あとは、どんな気づきをさせてあげるかですね。

武藤 人間は、五感の内でも視覚情報に頼る部分が強いから、聴覚の「日常」に揺さぶりをかけられると、その驚きは大きいですよね。

mamoru こんなことを長くやっていると、もう、なんでも音で捉えるようになっていて、それこそ、紙に雨って書いてこの「音を奏でる宝箱」の中に入れておけば、聞こえて来る気もするんですよ(笑)。

武藤 人間の脳には、変換の豊かさというか曖昧さが備わっていますから、きっと、聞こえてくるかもしれませんね。そういった部分でも、特に子どもの感性は豊かだし、それを引きだしてあげられるおもちゃとして、「音を奏でる宝箱」は存在感を発揮してくれればと願っています。

mamoru 「雨の音、聞こえるかい?」「うん、聞こえて来た! あと3枚入れたら、大雨の音になるのかな」とか。そんなコンセプチュアルな親子がいたらすごいですけどね(笑)。

武藤 もしそんな親子がたくさん増えたら、未来が抜群に明るくなる感じがしますね(笑)。さて最後に、今後どんな活動をしていきたいかを教えていただけますか。

dialogue_with_sis_vol12_07.jpgmamoru 作品に、日常という価値観を用いている以上、世界をもっと知らなければならないというリサーチ本能が、常にあります。日常の定義を覆してくれるようなところに行って、それでも日常ってなんだろうという考察をしてみたい。そういう意味で、これまではアメリカやヨーロッパへ行くことが多かったのですが、今年は、台湾やヴェトナムへ行くことにしています。中東にも行ってみたいですね。

武藤 SISも、今年は海外に積極的に出て行きたいと思っているんです。先日も、米国のテキサス州オースティンで開催されたSXSWというとても大きなコンベンションに出展してきました。今年は、上海やパリで開催されるイベントなどにも参加する予定です。ローカルではなく、世界でも通用するサービスやプロダクトを発信していきたいですし、日本発の技術やアイデアを、もっと海外に紹介していきたいとも思っています。その点でも、mamoruさんの活動というのはSISのひとつの指標になりますので、これからもぜひ、いろいろとお話ができればと思っています。

 

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<プロフィール>
mamoru(サウンドアーティスト)
1977 年大阪府生まれ。2001年、ニューヨーク市立大学卒業後、自作の音具や音響機材を用いた即興的なサウンドパフォーマンスや、マルチソース・マルチチャン ネル型のインスタレーション作品などを、国内外のギャラリーや美術館で発表。近年は、日常品から得られる音から作品を生み出す「etude」シリーズを主 に展開中。2011年「etude for everyday life/日常のための練習曲」を出版。http://www.afewnotes.com/


武藤新二/MUTO SHINJI
株式会社電通 汐留イノベーションスタジオ チームリーダー/クリエーティブディレクター
1992年、広告会社電通に入社。クリエーティブディレクション、コミュニケーションプランニング・商品ブランド開発設計、ソーシャルデザイン、メディアコンテンツ企画制作など、仕事の領域は多岐に渡る。2010年7月、電通社内に「汐留イノベーションスタジオ」を立ち上げ、社内さまざまなセクションから集まったクリエーター、プランナーを率いる。

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