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第12回:サウンドアーティスト mamoru


日常が持つ多面性を、表現する(1)

 

mamoru(サウンドアーティスト)
武藤新二(汐留イノベーションスタジオ ディレクター

普段我々がノイズとすら認識していない、日常の中の何気ない「音」を素材とした作品を作り続けているアーティスト、mamoruさん。そんなmamoruさんとSISは、昨年、PaPaCo Design Projectの一環として「音を奏でる宝箱」という名のおもちゃを共同開発しました。その発売開始を目前に控えた4月中旬、mamoruさんと久々の再会を果たし、表現者としての今とこの先について、話をしました。

 

 

『アートと広告の、意外な共通点』

 

武藤 「音を奏でる宝箱」、まずは、NADiff a/p/a/r/t、原美術館、十和田市現代美術館、福岡アジア美術館にて、まもなく発売開始です。SISから最初に販売されるリアルプロダクツなので、感慨深いですね。本当にありがとうございました。

dialogue_with_sis_vol12_01.jpgmamoru プロダクトのかたちが定まるまでには、紆余曲折がありましたよね。途中、ガラスでできた砂時計のようなプロダクトも考えましたが、結果としてとてもいい方向に落ち着いたと思います。でも、「宝箱」というコンセプトは最初からブレませんでしたね。子どもにとって大事なものをしまっておく容れ物があると、後々、例えば引っ越しの時にそれが出てきて、「何これ?」といった会話につながりますからね。おもちゃとはいえ、それを手に取った瞬間ではなく、その後のコミュニケーションの回路になるものを、というPaPaCo Design Projectの考え方は、とてもいいなと思いました。

武藤 実際にものを作っていく過程はもちろんですが、ぼくらとしては、mamoruさんとのセッション自体にも、とても意味を感じていたんです。普段の広告制作の過程では、限られた周辺領域の人たちと仕事をすることが多いので、アーティストの方と何かをじっくりつくり上げていくというプロセスは、とても刺激的でした。でもその一方で、mamoruさんって、広告クリエーティブにすごく近い発想の仕方をしているなとも思ったんです。

mamoru へえ、どんな部分がですか?

武藤 ぼくらは、ある「もの」を見た時に、みんなが思いつかない見方を発見することで、その「もの」の魅力の多面性を浮き彫りにしていくわけですが、それってmamoruさんが、例えばストローとか透明ラップといった日用品を使って思いもよらない音を発見し、表現するプロセスと、とても似ているなと感じました。あと、日常性に着目して、それを大切にされているところも、広告クリエーティブの世界に共通性があるんですよね。広告は常に人々に寄り添って存在していかなければならないわけでから、親しみやすさとか、自分でもできるかもしれない、そうなれるかもしれないという期待感を提供していくことが大切になります。

dialogue_with_sis_vol12_02.jpgmamoru 生活をカットアップしてサンプリングしてリミックスする、というのがぼくの創作のスタイルです。例えば、よく知っている曲をリミックスすることで、親近感というか、アクセスの良さを生み出すことができます。そして、アクセスはいいけれど、最終的に行き着いたところは知らないところだという、そんな感覚がぼくの作品にはあると思います。確かにそういう部分は、広告の考え方と似ているのかもしれませんね。




武藤 ひとつのものにひとつの価値や機能しかない、というところを突破して、「多面的な価値があるんだ」という気づきを伝える時、「アクセスがいい」ことと「行き着いたところが新しい」ことが同居しているのは、表現のロジックとして成功している証拠ですからね。

 

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<プロフィール>
mamoru(サウンドアーティスト)
1977年大阪府生まれ。2001年、ニューヨーク市立大学卒業後、自作の音具や音響機材を用いた即興的なサウンドパフォーマンスや、マルチソース・マルチチャンネル型のインスタレーション作品などを、国内外のギャラリーや美術館で発表。近年は、日常品から得られる音から作品を生み出す「etude」シリーズを主に展開中。2011年「etude for everyday life/日常のための練習曲」を出版。http://www.afewnotes.com/


武藤新二/MUTO SHINJI
株式会社電通 汐留イノベーションスタジオ チームリーダー/クリエーティブディレクター
1992年、広告会社電通に入社。クリエーティブディレクション、コミュニケーションプランニング・商品ブランド開発設計、ソーシャルデザイン、メディアコンテンツ企画制作など、仕事の領域は多岐に渡る。2010年7月、電通社内に「汐留イノベーションスタジオ」を立ち上げ、社内さまざまなセクションから集まったクリエーター、プランナーを率いる。

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