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第11回:名古屋大学教授 栗本英和

正解がない「成熟社会」に求められる人を育てたい(3)

 

『日本型リーダーの理想を目指して。』

 

武藤 先日授業に参加させていただいた後、メンバーたちと、「栗本先生のゼミ生たちはよく働くなぁ」って話していたんです。準備から本番まで、彼らの協力がなければ、あんなにうまくいかなかったと思います。その結束力には、正直感動しました。

伊藤 栗本先生のゼミ生たちは、みんな主体的に動きますよね。あと、大学院生が学部生をまとめていく自然な感じも、見ていて気持ちがいい。みんな自発的に動きつつ、連係している感じですね。

dialogue_with_sis_vol11_05.jpg栗本 たまたま、志の高い学生が偶然に集まってきているんですよ(笑)。「これだ」といった正解やお手本がなく、既成概念や前例がない中で活動をしているので、何事も模索しながら解を見つけていく。その経験やプロセスを通じて、自発性とか自律性が、結果として芽生えたのかもしれませんね。

武藤 そういう環境を与えてあげることって、とても大事ですよね。栗本先生の構想で教養教育院内に作られた「エース・ラボS」という自律学習や協調学習のプロジェクトは、そうした場を創出する意図から生まれたんですか?

栗本 そうです。協調学習をしやすい環境を考え、端末はノート型にしたり、机と椅子はフリーレイアウト式にしたり。あと、グループで使う机の椅子は、ひとつだけ赤にしました。「そこに座ったら、今日は自動的にリーダーだよ」という暗黙のルールを与えるために。

伊藤 自主学習と言っても、プロジェクトベースラーニングになっていて、こういうコンテンツをつくるということが先生からアサインされているから、学生たちが役割や目的を持って動けるんですよね。

栗本 そうかもしれません。さっきの赤い椅子のほかには、年少者を敢えてリーダーにすることもします。そうすると皆で助け合う気持ちが生まれる。年下のリーダーは、「できないからよろしくお願いします」と謙虚になれる。あと、必ず学生に議事録を書かせています。これは良いトレーニングになります。議事録は単なるテープ起こしとは違って、要点や流れを咀嚼して記録していかなければいけないから、経験のない学生には難しいようです。

dialogue_with_sis_vol11_06.jpg武藤 そういった、自発的に学べる環境って大事ですよね。それにしても栗本先生が目指しているところをお伺いすると、これからのリーダーに必要な力というのは、特にコミュニケーションの場において、情報の収集力、分析力、発信力、この3つに収束される気がします。今、プロジェクトで何をやっているのか、これから何をするのか、どういったメンバーで活動をして、自分は何をすればいいのか。それを的確に捉えて自分のやるべきことをし、時にはその役割をはみ出して行動をするのかしないのか、といった判断やサジェスチョンを的確にやっていく力は、社会に出てもとても役に立つ力だと思います。そしてその判断のよりどころとして、リベラルアーツが大事になっていく、ということではないでしょうか。

伊藤 可視化、言語化されていない「状況」や「状態」を情報と意識して発見/収集し、それを的確に分析し、さらにはしかるべきところに向かって発信していく......。ソーシャルメディアが普及して、情報の量が飛躍的に増えていく中で、今、何が個人や集団にとって必要であるかを判断するには、やはり、ジャンルを横断した知性や的確に「伝わる」発信力が、大事になってきますね。

栗本 モノを作るのも人、それを考えるのも人、それを受け取って感じるのも人。モノが中心では決してありませんよね。人が介在しているからこそ、そこで人に響くものが生まれていたわけです。でも我々は、成長期の過程でそれを忘れていたのかもしれません。この先、日本が欧米やアジアに対して様々な分野で価値を提供していくには、文化に裏付けされた価値観や美徳とともに、人を大切にしてモノを作っていく意識をもっと持たないと、存在感というか、尊敬される国になっていかないと思います。我々にできることは、モノづくり、コトづくり、ヒトづくりです。

武藤 栗本先生のやろうとされていることは、僕らの目指している部分と共通項が多いと感じます。広告業界の社会的役割をもっと考えていく中で、ぜひ今後も引き続き連係させていただければと思っています。

 

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<プロフィール>
栗本英和/Hidekazu Kurimoto
1956年愛知県生まれ。名古屋大学大学院工学研究科博士課程前期課程修了。工学博士。専門分野はプロセスシステム工学、情報マネジメント、経営品質。現在、名古屋大学評価企画室教授、教養教育院、大学院環境学研究科及び情報文化学部を兼務。

伊藤健二/ITO KENJI
慶應義塾大学 大学院 政策メディア研究科 特別研究准教授
みずほ情報総研にて7省庁の委員等で政策提言を行いつつ、産学官連携のプロジェクトを長年に亘って企画・推進する。2005年4月より慶應義塾大学を兼任後も、産学官連携によりビジネスモデル研究・実践を行う。

武藤新二/MUTO SHINJI
株式会社電通 汐留イノベーションスタジオ チームリーダー/クリエーティブディレクター
1992年、広告会社電通に入社。クリエーティブディレクション、コミュニケーションプランニング・商品ブランド開発設計、ソーシャルデザイン、メディアコンテンツ企画制作など、仕事の領域は多岐に渡る。2010年7月、電通社内に「汐留イノベーションスタジオ」を立ち上げ、社内さまざまなセクションから集まったクリエーター、プランナーを率いる。

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