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第11回:名古屋大学教授 栗本英和

正解がない「成熟社会」に求められる人を育てたい(2)

 

『リベラルアーツが、21世紀の人を育てる。』

 

dialogue_with_sis_vol11_03.jpg武藤 栗本先生は、情報文化学部という名の学部に携わっていらっしゃるわけですが、具体的には、どんなことを目指す学部なのでしょうか。

栗本 先程「21世紀の人間の営み」と仰いましたが、日本の社会や経済は、これまでの右肩あがりの成長期から、成熟期に入ったと言えるでしょう。成熟期というのは、経営にしても教育研究にしても、どこへ向かえばいいのか明確な正解が見えにくい、あるいは正解のない時代のことです。そのため、未来の道標を見つけるのはとても難しい。そんな時代のリーダーを育成することも、情報文化学部が目指している教育だと思っています。言い換えれば、文系・理系という枠組みを超えた教育です。

武藤 教養、つまりはリベラルアーツを体系的に身につけさせるということですね。

栗本 その通りです。乱暴に言ってしまえば、左脳と右脳を繋げるような、想像力[イマジネーション]を生み出すことです。個人的には論理的情報と感性的情報との繋がりから想像力を掻き立てる学生を育てたいと考えています。

伊藤 そこから生まれた言葉が、「考想」というキーワードなんですよね。

栗本 そうです。想いを絶えず抱きながら考えることをなぞらえた、「構想」の当て字です。これからの成熟期においては、特に人間性に優れていないとリーダーにはなれない。地域、国、世界のリーダーを育てるということが、国立大学の社会的な責務だとすれば、自発性や自律性に満ちた勇気ある人を育てることが急務だと考えています。そのためには「学ぶ力を学ぶ」ということが大切だと、伊藤先生から教えていただきました。

dialogue_with_sis_vol11_04.jpg伊藤 「学び」とは本来、未知なるものを既知のものと関連付けて理解し、コミュニケーションをする能力ですからね。答えがないものに身を投じていくこと、それが重要な学びだと思います。リベラルアーツはまさに、そういった能力や知性を涵養させることに適した学問ですよね。

武藤 80年代半ば以降のバブル、それこそ成長期の末期の頃に、日本は産業社会から高度消費社会へと転換したわけですが、そのとき、「何をつくり出すか」ではなく、「どんな商品を持っているか」が社会的なアイデンティティの承認になってしまいました。そんな消費社会の構造が学びの場にも導入されていった結果、「それを学ぶと何の役に立つのか」といった有用性でもって、学びを判断されることになってしまった気がします。

伊藤 それって、商品購入のスキームにほかなりませんね(笑)。

栗本 我々は正解を求めがちです。でも、正解がない世界に対して「どうすればいいの?」という時、これまで十分な回答を持ち合わせてこなかった。機会を摑める人、困難に挑める人、自律性と自発性を育む人、そういう行動様式を取れる人を醸成していくことが、これからの日本にとって大切だと考えています。学生時代に身につけた「学ぼうとする力」は、一生涯のもの。卒業してもこの力があれば、きっと、成長していけると思うんです。

 

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<プロフィール>
栗本英和/Hidekazu Kurimoto
1956年愛知県生まれ。名古屋大学大学院工学研究科博士課程前期課程修了。工学博士。専門分野はプロセスシステム工学、情報マネジメント、経営品質。現在、名古屋大学評価企画室教授、教養教育院、大学院環境学研究科及び情報文化学部を兼務。

伊藤健二/ITO KENJI
慶應義塾大学 大学院 政策メディア研究科 特別研究准教授
みずほ情報総研にて7省庁の委員等で政策提言を行いつつ、産学官連携のプロジェクトを長年に亘って企画・推進する。2005年4月より慶應義塾大学を兼任後も、産学官連携によりビジネスモデル研究・実践を行う。

武藤新二/MUTO SHINJI
株式会社電通 汐留イノベーションスタジオ チームリーダー/クリエーティブディレクター
1992年、広告会社電通に入社。クリエーティブディレクション、コミュニケーションプランニング・商品ブランド開発設計、ソーシャルデザイン、メディアコンテンツ企画制作など、仕事の領域は多岐に渡る。2010年7月、電通社内に「汐留イノベーションスタジオ」を立ち上げ、社内さまざまなセクションから集まったクリエーター、プランナーを率いる。

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