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第10回:ブックショップ「ユトレヒト」代表 江口宏志

コンパクトな集団だからこそ可能な創造[こと](2)

 

『目利きであることの重要性。』

 

dialogue_with_sis_vol10_03.jpg 武藤 若い人たちを中心に、本や雑誌ばなれが進んでいると言われていますが、実際のところ、本の未来ってどうなんでしょうね。

 

江口 まあ、ピンチですよね(笑)。僕ら30代後半くらいまでの世代は、まだ本というものへの信仰というか信頼がある気がしますが、もっと下の世代で感覚の鋭い子たちが、「本なんていらない」って思ったとしたら、どうなることやら......。僕もたまに本を作ったりしていますが、作ることが正しいことなのかどうか、常に考えてしまいます。

 

武藤 でもユトレヒトの場合、たとえばここでしか買えない本や雑誌が、マーケットのニーズを見越した適正な価格で売られているわけじゃないですか。それって、実はなかなかできることじゃない。情報やものがあふれているこの時代、ものを見つけてくるのと同じくらい、ものに適正な値段を付けられる「目利き度」って、大切だと思うんです。逆に言うと、それがあるからこそ適正なサイズ感でのビジネスが成り立つわけで、適正なサイズ感だからこそ、コントロールを効かせながら好きなことにチャレンジできるわけですからね。

 

江口 最近、伴美里の『mille feuille』という作品集を作ったのですが、これは、アメリカのblurb(www.blurb.com)というオンデマンドの出版サービスを使いました。ウェブでも見られるようにして、それでいい人はウェブでいいし、欲しい人は買ってね、という方式にしたんです。過渡期ならではの解決策ですけれど、まあでも、テクノロジーとか変化を嫌がるんじゃなくて、色々なものを使って試しながらやっていくというが今なのかなとは思います。結構なクオリティの本を廉価で作れるのですから、いい時代だと思いますよ。

 

dialogue_with_sis_vol10_04.jpg 武藤 今あるテクノロジーを使っても、組み合わせ次第ではエッジの効いたことができる、ということですよね。それを見つけられるのも、やっぱり「目利き力」なわけですからね。先程の顧客の忠誠度を上げる意味でも、そこはとても重要かなと。

 

江口 色々やっちゃって、「何やっている人なのか判らないね」と言われてしまうのが、一番評価を下げると思うんです。本分をおろそかにしない、それだけは気をつけています。小さい集団は、評価が変わればあっという間に立ちゆかなくなってしまいますから。

 

武藤 自分がこれだと思ったマーケットに対して、コンパクトかつ確実にアプローチをしていく。そのサイズ感で十分というか、時代性はむしろ、そういったスモールユニットが待望されている気がします。そのサイズの見極めに、力量が問われるのでしょうけれど。でもそういった集団がいっぱい増えれば、社会はもっと豊かになるかもしれませんね。

 

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<プロフィール>
江口宏志/Hiroshi Eguchi
1972年長野県生まれ。明治大学経営学部卒業。2002年ブックショップ「ユトレヒト」をオープン。2008年には表参道にギャラリースペースの併設されたショップ「UTRECHT/NOWIDeA」をオープンした。国内外のアーティストとのネットワークを生かした独自のセレクト、企画展示を行っている。「MUJI」店舗内の「MUJIBOOKS」等、様々な本のある空間のディレクションも行う。2009年からスタートした東京初のアートブックフェア「ZINE'S MATE, THE TOKYO ART BOOK FAIR」では共同ディレクターを務める。2010年には体験、共感型の新しいイベント「D♥Y(ディー・アイ・ワイ)」を企画・開催。国連大学前広場で行われている「FARMER'S MARKET」に併設する本の直売所「BOOKMAN'S MARKET」のディレクションも行っている。

 

>> UTRECHT

>> NOW IDeA

>> ZINE'S MATE

>> D♥Y

 

武藤新二/MUTO SHINJI
株式会社電通 汐留イノベーションスタジオ チームリーダー/クリエーティブディレクター
1992年、広告会社電通に入社。クリエーティブディレクション、コミュニケーションプランニング・商品ブランド開発設計、ソーシャルデザイン、メディアコンテンツ企画制作など、仕事の領域は多岐に渡る。2010年7月、電通社内に「汐留イノベーションスタジオ」を立ち上げ、社内さまざまなセクションから集まったクリエーター、プランナーを率いる。

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